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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二(うみがめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 頁
かの鐘はむかしから引揚げを企てた者もあったが、それがいつも成功しないのは水神が惜しませたまう故であると伝えられている。また、その鐘の下には淵の主が棲んでいるとも伝えられている。支那の越王潭には青い牛が棲み、亀山の淵には青い猿が沈んでいるという、そうした奇怪な伝説も思いあわされて、三人もなんだか気味悪く感じたが、将軍家の上意とあれば、辞退すべきようはない。火の中でも水の底でも猶予なく飛び込まなければならない。こう覚悟すると、かれらもさすがに武士である。それにはまた一種の冒険的興味も加わって、三人はまず山下にむかってお請けの旨を答えた。
組頭もそばから注意した。
「大事の御用だ。一生懸命に仕つれ。」
「かしこまりました。」
三人は勇ましく答えた。山下のあとに付いて行くと、将軍も野懸け装束で、芝生のなかの茶屋に腰をかけていた。あたりには、今を盛りのつつじの花が真っ紅に咲きみだれていた。将軍の口からも山下が今いったのと同じ意味の命令が直きじきに伝えられた。
ここで正式にお請けの口上をのべて、三人は再び木母寺へ引っ返して来た。それぞれに身支度をするためである。