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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《痴人の愛(ちじんのあい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 179,399 字 · 353 頁
十二
が、いつでもそれが長続きしたことはなく、彼女に対する愛憎の念は一と晩のうちに幾回でも、猫の眼のように変りました。
十二
閑散であった大森の家には、浜田や、熊谷や、彼等の友達や、主として舞蹈会で近づきになった男たちが、追い追い頻繁に出入りするようになりました。
やって来るのは大概夕方、私が会社から戻る時分で、それからみんなで蓄音機をかけてダンスをやります。ナオミが客好きであるところへ、気兼ねをするような奉公人や年寄は居ず、おまけに此処のアトリエはダンスに持って来いでしたから、彼等は時の移るのを忘れて遊んで行きます。始めのうちはいくらか遠慮して、飯時になれば帰ると云ったものですが、
「ちょいと! どうして帰るのよ! 御飯をたべていらっしゃいよ」
と、ナオミが無理に引き止めるので、しまいにはもう、来れば必ず「大森亭」の洋食を取って、晩飯を馳走するのが例のようになりました。
じめじめとした入梅の季節の、或る晩のことでした。浜田と熊谷が遊びに来て、十一時過ぎまでしゃべっていましたが、外は非常な吹き降りになり、雨がざあざあガラス窓へ打ちつけて来るので、二人とも「帰ろう帰ろう」