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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
線上閱讀菊池 寛《真珠夫人(しんじゅふじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 頁
もっと、青年を恥しめてやればよかったと、口惜しがった。睦じそうに並んで、遠ざかって行く二人を見ていると、勝平は自分の敗れたことが、マザ/\と判って来た。青年の罵倒に口惜しがって、思わず飛び出したところを、手もなく扱われて、うまく肩透しを喰ったのだった。どんな点から、考えて見ても、自分にいゝ所はなかった。敗戦だった。醜い敗戦だった。そう思うと、わざ/\五万を越す大金を消って、園遊会をやったことまでが、馬鹿らしくなった。大臣や総裁や公爵などの挨拶を受けて、有頂天にまで行った心持が、生若い男女のために地の底へまで引きずり込まれたのだ。
彼の憤りと恨みとが、胸の中で煮えくり返った時だった。その憤りと恨みとの嵐の中に、徐々に鎌首を擡げて来た一念があった。それは、云うまでもなく、復讐の一念だった。そうだ、俺の金力を、あれほどまで、侮辱した青年を、金の力で、骨までも思い知らしてやるのだ。青年に味方して、俺にあんな憎悪の眼を投げた少女を、金の力で髄までも、思い知らしてやるのだ。そう思うと、彼の胸に、新しい力が起った。
青年の父の杉野直と云う子爵も、少女の父の唐沢男爵も、共に聞えた貧乏華族である。