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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
線上閱讀菊池 寛《真珠夫人(しんじゅふじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 頁
ねえ! 秋山さん、今明治時代の第一の小説家は、誰かと云う問題が、起っているのですがね、貴君のお考えは、何うでしょう。こう云う問題は、専門家でなければ駄目ですからね。」
三宅は、最後の言葉を、信一郎に当てこするように云った。瑠璃子夫人までが、その最後の言葉を説明するように信一郎に云った。
「此の方、秋山正雄さん、御存じ! あの赤門派の新進作家の。」
秋山正雄、そう云われて見れば、最初見覚えがあると思ったのは、間違っていなかったのだ。信一郎が一高の一年に入った時、その頃三年であった秋山氏は文科の秀才として、何時も校友会雑誌に、詩や評論を書いていた。それが、大学を出ると、見る間に、メキ/\と売り出して、今では新進作家の第一人者として文壇を圧倒するような盛名を馳せている。その上、教養の広く多方面な点では若い小説家としては珍らしいと云われている人だった。
信一郎は、自分が有頂天になって、喋べった文学論が、こうした人に依って、批判される結果になったかと思うと、可なりイヤな羞しい気がした。有頂天になっていた彼の心持は忽ち奈落の底へまで、引きずり落された。場合に依っては、此の教養の深い文学者――しかも先輩に当っている――と、文学論を戦わせなければならぬかと思うと、彼は思わず冷汗が背中に湧いて来るのを感じた。