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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,638 字 · 233 頁
尊氏はそれに力を得、多摩の府中へ進出した。しかも兵は日々ふえて行った。尊氏の名はまだ東国でそう落ちぶれてはいなかった。
しかし、新田義宗(義貞の三男)の大軍とぶつかって、尊氏はその序戦に惨敗した。金井、人見の原の合戦にもやぶれた。こんなとき、彼はさいごの物までは賭けない。陣を石浜(青梅線の多摩川原)に移して、甲州、相模、武蔵の兵をさらに糾合した。そして次の戦略を慎重にした。
このあいだに、宗良親王の大旆は、碓氷から武蔵の小手指ヶ原に着き、新田義興(義貞の二男)と脇屋義治(義助の子)を両翼とし、ほとんど武蔵野を風靡していた。
が、尊氏はこれを、数日のまに、討って討って撃ち破った。
奥武蔵の高麗一族をしてその背後を驚かせ、また芳賀貞綱の勢を川越から。武田、薬師寺の軍を狭山から。およそ三面から総がかりで寸断したものとおもわれる。
この一戦は「太平記」に“笛吹嶺ノ合戦”として有名である。だがほんとは、多摩、入間、高麗の三郡にかぎられた地域の戦いであった。碓氷峠や三国峠はただ宮方勢が敗走して行った山波の彼方であったまでにすぎない。
すべて東国各地の戦いも、その令は、吉野の軍師親房から出ていたものにちがいない。