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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,638 字 · 233 頁

青空文庫

しかし令使は遠すぎる。受ける方ではどうしても、準備不充分な急出動となりやすい。

そうとでも解釈するほか、武蔵野の場合では解きようのない宮方の大敗だった。これで関東における計画はまるつぶれとなった形である。はるばる来た奥州勢もむなしく途中で引っ返してしまい、新田、脇屋の諸党も四分五裂、とくに宗良親王の軍は、碓氷の彼方へ、遠くその残影を再びひそめてしまった。

この宮こそは、好まぬお手の弓だった。いつか四十二のお年を風雲の中にかぞえられたが、自著「李花集」の歌のかずかずにも窺われるように、性はまったく文雅なおひとであった。信濃では「信濃ノ宮」と人みな申し上げて、大川原の香坂高宗の館に多年お身をひそめておられたのだった。

信濃国大川原の深山の中に庵して住み侍りける谷間の月をみて〔李花集雑〕

いづ方も

山の端近き柴の戸は

月見る空や

すくなかるらむ

けれどこんな御生活の許へも、一朝、吉野の軍令が来れば、宮は征夷府大将軍として馬上兵甲のあいだに伍し、即刻、庵を立たねばならなかった。――可惜だが、尊氏の下の必死な将士に蹴ちらされたのもむりではない。まったく宮の責めではない。