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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,638 字 · 233 頁

青空文庫

「む、一ト頃は、伊吹もあやうく、そのため、道誉の手で、梅迫の光福寺(現・安国寺)へ御避難をおすすめ申しおいたもの。……じつは、尊氏自身で、丹波へお迎えにとも考えたが、都の留守も案じられ、佐々木道誉を、数日前に、わしの代りにつかわしておいたのだ。……思えば、これは虫の知らせであったらしい」

「ははあ。それは僥倖でしたな。もし後醍醐の件が、御不在中のことでもあったら、どんな大混乱となっていたかわかりません。それにつけ、都もまだこんなありさまでは、せっかく母上をお迎えしても、いつまた、いかなる変を見まいものではなく、それがまた、兄者の御負担になりはいたしませぬか」

「いや。わしとおまえとの、兄弟の心次第だろう。そとの敵は、あらまし、恐れるにはたらん。……かつはまた」

と、尊氏は、あらたまって、こう言った。

「上に、新しい朝廷を仰ぎ、そして、室町幕府の第一歩をそのお膝もとに開く日にあたりながら、なお尊氏が、自分の母や妻子らを、遠くにおいているとあっては、諸民の思わくがどうであろうか。人心の鎮めにも、よいかたちではない」

「いかにも、それはその通りですが」

「かたがた、久しぶりで戦のない正月だ。