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かいだんいちやぞうし

綺堂随筆 江戸のことば

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《綺堂随筆 江戸のことば(かいだんいちやぞうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,152 字 · 27 頁

青空文庫

三

若い者の報告を聞いて、わたくしの父は首をかしげていました。

「坊さんなぞというものは、とかくにそんな怪談めいたことを言いたがるものだからな。本当か嘘か判らない。」

しかしそれを聞いたのは、わたくしの店の者ばかりではないとみえて、その噂が忽ちに近所に拡がって、駈落ちの噂が一種の怪談に変わりました。

「やっぱりあの家には祟りがあったのだ。今まで何事もなかったが、浅井さんがいよいよ立ち退くというまぎわになって、不思議の祟りが起こったのだ。」

息子の余一郎さんはともあれ、他人のお角さんまでがどうして巻き添えを食ったのでしょう。お角さんまでがなぜ祟られたのでしょう。それが呑み込めないと、わたくしの父はやはり強情を張っていました。父がいくら強情を張ったところで、二人がゆくえ不明になったのは争われない事実で、駈落ちか怪談か、二つに一つと決めるよりほかはないのでございます。

前後の事情から考えると、一途に駈落ちとも決められず、さりとて怪談も疑わしく、みんなもその判断に迷ってしまったのです。

三

それに就いて、お父さんの浅井さんの意見はと訊ねますと、最初はなんにも判らぬと言っていましたが、しまいにこんなことを打ち明けたそうです。