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せいアレキセイじいんのさんげき
聖アレキセイ寺院の惨劇
小栗 虫太郎
線上閱讀小栗 虫太郎《聖アレキセイ寺院の惨劇(せいアレキセイじいんのさんげき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 32,638 字 · 65 頁
一
それにつれて、祈祷の告知だった美しい鐘声も古めかしい時鐘となってしまい、かぼそい喜捨を乞い歩く老ラザレフの姿を、時折り街頭に見掛けるのであった。
さてこうして、聖アレキセイ寺院の名が、白系露人の非運と敗北の象徴に過ぎなくなり、いつかの日彼等の薔薇色であった円蓋の上には、政治的にも軍事的にも命脈のまったく尽きたロマノフの鷲が、ついに巨大な屍体を横たえたのであるが、その矢先に、この忘られ掛けた余燼が赫っと炎を上げたと云うのは、荒廃し切った聖堂に、世にも陰惨な殺人事件が起ったからである。(読者は次頁の図を参考としつつお読み願いたい。)
聖堂の図
一
推理の深さと超人的な想像力によって、不世出の名を唱われた前捜査局長、現在では全国屈指の刑事弁護士である法水麟太郎は、従来の例だと、捜査当局が散々持て余した末に登場するのが常であるが、この事件に限って冒頭から関係を持つに至った。と云うのは、彼と友人の支倉検事の私宅が聖堂の付近にあるばかりでなく、実に、不気味な前駆があったからだ。時鐘の取締りをうけて時刻はずれには決して鳴ることのない聖堂の鐘が、凍体のような一月二十一日払暁五時の空気に、嫋嫋とした振動を伝えたのである。