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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

線上閱讀火野 葦平《花と龍(はなとりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 頁

青空文庫

延命寺には、宮本武蔵の墓があるから、巌流島に於ける武蔵と佐々木小次郎との決闘について、一席弁じたてているのかも知れない。三人の乗って行った小伝馬船が、渚につながれ、船頭は、待っている間を利用して、魚を釣っている。

「あの女、なんじゃろか?」

好奇心に駆られて、仲仕たちは、なおも、しきりと評定をするが、誰も、その正体をいい当てる者がない。

「うちの親方のところに、誰か、また、えらい客人が来とるのかも知れんなあ。きっと、その人のつれじゃよ」

その観察が、いくらか当っているようだった。

彦島貯炭場での昼休みである。彦島は、下関とは川を一つ隔てているだけであるが、市街地の方とは、まったく違った雰囲気があった。いたるところに、貯炭の山があり、その繰替をしたり、艀への積込みをしたりする仲仕たちが、方々に、屯していた。語源があきらかでないけれども、この地方では沖仲仕も、陸仲仕も、ひっくるめて、「ゴンゾウ」と呼ばれている。

昼弁当を使っている十七八人の仲仕たちの中に、谷口マンも、まじっている。女は五六人、マンのとなりに、松野菊江という、マンより三つほど年配の女仲仕が、杉の木の四角な重箱から、麦飯を、番茶漬けにして、いそがしげに、かきこんでいる。