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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

線上閱讀火野 葦平《花と龍(はなとりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 頁

青空文庫

それは、しかし、不気味さや、恐しさではなく、いいようもない佗しさ、悲しさ、寂しさであり、やり場に困る腹立たしさであった。そして、その憤りは、親方に対してよりも、一層はげしく、サクの方へ向いていた。

(この毒の花のような女が、このよい親方を殺してしまったのだ)

マンは、一見しおらしげなサクへ、はげしい憎悪をおぼえた。

「親方、……永田の親方」

膝をついて、肩をゆすぶった。

永田は鼾を止め、軽い呻きを発するだけで、眼をさます様子がない。

「こんなに疲れていらっしゃるんですから、もう、このままに……」

そのサクの言葉には答えず、マンは、枕元にある水さしを取った。永田をあおむけにしておいてから、水を口にふくみ、ブウッと、親方の顔にふきかけた。二度、冷たい水を浴せると、永田は、ようやく、眼を開いた。

「親方」

「おサクかい?」

舌のもつれたような声である。

「わたしですよ。玉井のマンです。わかりますか?」

「わかるが、……なんで、おマンが来たんじゃ?」

「親方を迎えに来ました。すぐ、あたしと帰って下さい。永田組が潰れかかっています。夜業の現場に、大庭の大親方がお出ましになって――もし、今夜の荷役に、永田が姿を見せなんだら、考えがある。