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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
線上閱讀火野 葦平《花と龍(はなとりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 頁
ネオンをきらめかす明かるい電燈と、けばけばした色彩と、ごった返している群衆、映画館、芝居小屋、寄席、木馬館のメリー・ゴーラウンド、煽情的な看板、幟、旗、そして、ずらりとならんだ食べ物屋、飲み屋、焼き鳥のにおいと、ジンタの音楽との奏でだす、世にも頽廃的な狂躁曲――金五郎は、またも、ぽかんとなるような気持で、あたりを眺めまわしながら、
(この浅草のどこかに、お京が居るのじゃ)
と、夢幻的な感傷に捕われていた。
瓢箪池の水面に、きらびやかな風景が、さかさに影を落している。美しい。しかし、共同便所と樹木とのある側は、その一劃だけ、まるで、光の中の穴のように、暗い場所になっていた。無意識のように、般若の五郎の後にしたがって歩いていた金五郎は、ふっと、自分がひどくさびしいところに来ていることに気づいた。なんの木なのか、葉の繁った低い立木が密集し、周囲の喧噪から完全に遮断されている。光は葉越しにちらついているだけだ。
「五郎さん、もう、お京さんの居るところは、近いですか」
そう、訊いてみた。
「ケッケッケッケッ」
烏のような異様な哄笑が、はねかえって来た。五郎は老いぼれた身体を、バネ仕掛のように、反動つけながら、おかしくてたまらぬもののように、腹をよじらせて、笑っている。