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あぢさい
花火・来訪者 他十一篇
永井 荷風
線上閱讀永井 荷風《花火・来訪者 他十一篇(あぢさい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 52,046 字 · 104 頁
即ちあらゆる江戸文明の究極点は、この劇的綜合芸術中に集注されているのである。講談における「怪談」の戦慄、人情本から味われべき「濡れ場」の肉感的衝動の如き、悉くこれを黙阿弥劇の中に求むる事が出来るではないか。三味線音楽が、またこの劇中において、如何に複雑に且つ効果鋭く応用されているかは、已に自分がその折々の劇評に論じた処である。「殺の場」のような血醒き場面が、屡々その伴奏音楽として用いられる歌沢風の独吟と、如何に不思議なる詩的調和を示せるかを聞け。
以上は黙阿弥劇に現われたロマンチックの半面であるが、その写実的半面は、狂言の本筋に関係のない仕出しの台詞や、その折々の流行の洒落、または狂言全体の時代と類型的人物の境遇等において伺い知られるのである。維新後零落した旗本の家庭、親の為めに身を売る娘、新しい法律を楯にして悪事を働く代言人、暴悪な高利貸、傲慢な官吏、淫鄙な権妻、狡獪な髪結等いずれも生々とした新しい興味を以て写し出されている。自分は幕末から維新当時における下層社会の生活状態を研究するに、黙阿弥の著作が最も尊い材料である事を疑わないばかりでなく、なお今日に及んでも本所深川辺りの露地生活の秘密を知ろうとするには、非常に便利な手引草であると信ずる。