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おちぼひろい

落穂拾い・犬の生活

小山 清

線上閱讀小山 清《落穂拾い・犬の生活(おちぼひろい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 頁

青空文庫

金歯を填めているのが見え、いつも酸漿を口に含んでいた。売り声にも年季が入っていて、新米には真似られない渋さがあった。この人は、その頃、観音さまの裏の宮戸座に出ていた沢村伝次郎(いまの訥子)に岡惚れしていた。荷を格子戸の外に置いたまま、台所のとばくちに腰を下ろして、母を相手に、伝次郎の演ずる勘平や蘭蝶のうわさをしていくことがあった。私は子供の頃には、納豆よりはみそ豆の方が好きだった。一体に私の嗜好はおとなしい方で、茄子よりは胡瓜、蕎麦よりはうどんの方が好きだった。そのほか南瓜やさつま芋などが好きだった。すべて下戸の好みである。兄はまた私とは反対であった。長じて兄は相当な酒呑みになったが、私はいまなお野暮な下戸である。

私が学校から帰ってきたときに、格子戸の外に魚屋が板台を下ろして、庖丁をあつかっていることがあった。私は袴をはき鞄をかけたままの姿で、そこに佇んで、魚屋が魚の腹を割いたり、刺身につくったりしているのを見ていては、よく祖母から叱られた。この辺にくる魚屋は土手向うから来たし、また八百屋は千束町から来た。八百屋は来ると、腹がけから経木を取り出して、それに列記してある商売物の名を読み上げた。