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おちぼひろい

落穂拾い・犬の生活

小山 清

線上閱讀小山 清《落穂拾い・犬の生活(おちぼひろい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 頁

青空文庫

祖父の愛が私に加わったのも、また父は別にして母までが私のことで祖父に対して遠慮気の見えたのも、ひとつはそういう事情のせいであろう。

ごく幼い頃の思い出だが、私は夜の明け方ごろになると、隣りの父の寝床に這い込んでいっては、よく父に「お話して、お話して。」とねだったものだ。すると父はいつでも「うん。よしよし。」と云って、私の毬栗頭を抱いて、寄席で聞いてきた落語や講釈の話をしてきかせてくれた。私の記憶には父の話し振りがなかなかユウモラスな上手なものとして残っている。父はまた自分から畳の上に仰向けになって、揃えた足の裏を私の帯の前にあて、私に手足を泳がさせては亀の子の真似をさせたりした。また自分の背に私を後向きに背負って、「千手観音だ。」と云って冗談をしたりした。幼い私は父の背で「千手観音、拝んでおくれ。」などと云ったりした。私はこの遊びが好きで、よく父にせがんだものであった。父はふだんは陰気で黙りがちであったが、そんな時には巧まない瓢逸なところが見られた。若しも父が並の躯であったなら、父のこういう為人はもっと外部にあらわれて、広く暖く家庭を包んだことであったろう。