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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
線上閱讀小山 清《落穂拾い・犬の生活(おちぼひろい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 頁
倉の二階が座敷になっていて、そこが父の稽古場であった。イエの稽古の折、私は家に居合すと、そっと倉の中に入り、階段の中途に腰かけて、二階の声に耳を澄した。偶々イエは「野崎村」を習っていた。※(歌記号、1-3-28)わけはそっちにおぼえがあろ……そなたは思いきる気でも……このお染の口説が二度三度と聴く中に私の耳に残るようになった。子供の私にはもとより文句の意味も解らず、云い廻しの情趣も汲みとれたわけのものではなかったが、あの恨み言葉を云うときのイエの声音が妙に私を惹きつけた。耳に心快ったのか、また心に沁みたのか、やはりイエという少女の肉声の持つ抒情であったろう。竹の子剥ぎの際に感じたのと同じような恍惚を私はこのときにも味わった。
家には「大阪お祖母さん。」と呼ばれる人がいた。祖父の姉で出戻りの身をそのまま家にいてしまったのである。この人は太棹は女としてはかなりのてだれであった。父が初めて大阪へ修業に行ったのは十三、四の頃であったというが、この人が伴いて行った。家では祖母と区別するために、この人のことを「大阪お祖母さん。」と呼んでいた。私が物心のついた頃にはもういい齢で多少耄碌していたが、でも家に来る女弟子の三味線のさらい位はやってのけられた。