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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
線上閱讀小山 清《落穂拾い・犬の生活(おちぼひろい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 頁
兄は興奮から「貴様ッ、貴様ッ。」と云い、私の喉を締めつけた。私はただ防いだ。そのとき祖母がそばから「こんな奴はいっそ勘当してしまうといい。」と云った。私は憤りが胸さきに込みあげた。私は攻勢に出た。兄の裁縫の弟子が止めに入った。兄は私の眼が憤りで一ぱいになったのを見ると力を緩めた。その時格子の開く音がして客の気配がした。私達は互いに手を振り解いた。客はイエだった。イエは挨拶しかけてその場の異様に気づき、「どうなさったんです?」と祖母の顔を見た。「ああ痛てえ、もう少しで息が詰まるとこだ。」私はわざとそんな捨台詞をして二階の自分の部屋に引き上げた。
イエに見られた、イエに見られた、私はやけくそな気持になった。しかし私にはどこか心の底の方に見られてよかったと安堵する気持があった。やはり私にはイエに甘えるものがあったのだろう。「盥の底を抜いちまやがったんです。……おい、直るか?」私の毀した盥を片づけている弟子にであろう、そう呼びかけている兄の声が耳に入った。私はふいに可笑しさを感じた。私がいますぐ階下へ下りていって小遣いをねだったら、兄はどんな顔をするだろうと思った。