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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
線上閱讀小山 清《落穂拾い・犬の生活(おちぼひろい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 頁
その満足そうにしている様子を見て、私はメリーにすまないような気がしたが、それでも嬉しくないことはなかった。私は慣れぬ仕事で掌にできた肉刺をなでながら、自分にもなにかがつくれるという喜びをかすかに感じた。それは遠いところからきた暗示のように、かすかに私に囁きかけた。なにかがつくれる。愛することだって、出来ない限りでもない。
私はメリーを獣医の許に連れて行った。私の家から銭湯へゆく途中に犬猫病院がある。私はそれまでべつに注意もしなかったその看板が気になるようになり、そのうちいちどメリーを診察してもらっといた方がいいのではないかと思った。メリーはただの躯ではないのだから。私はメリーには出来るだけのことをしてやりたいと思った。お婆さんは首をかしげて、「そうねえ。それは診てもらっておくに越したことはないでしょう。」と云った。お婆さんの眼の表情は私に向って、「あんたも案外愛犬家の素質があるようですね。」と云っているように見えた。
獣医は柔和な顔をした青年紳士であった。診察室の壁には、ルッソーの「幸福なる四部合奏」の複製がかかげてあった。私はおやおやと思った。