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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
線上閱讀小山 清《落穂拾い・犬の生活(おちぼひろい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 頁
「五〇は呑気だなア。」そういう、その人の面持にあって。――私は呑気であった。
私のうしろの席に七八〇番という人がきた。政治運動をしている人で、その人の子分がなにか暴挙を働いて、それで罪に問われた、そんな話であった。もう五十を越えた、でっぷりふとった人で、いい人だった。やはり東京の人だった。磊落な人だった。こんなところへきていても、ふだんとちっとも変らない、そんな感じの人だった。私と七一〇番のそんな話をうしろで耳にしては、「五〇番、出たら遊びに来給え。銀座のモナミを御馳走しよう。」こう云ってくれた。
七三五番というのがいた。若かった。まだ童顔の失せぬ、そして男らしい感じの若者であった。私は彼に心を惹かれ、よく彼の姿を眼にとめては見たが。純日本犬、そんなふうに感ぜられた。いつも元気な顔をしていて、そして卑しさが感ぜられなかった。仕事の成績も素晴しかった。
七八〇番とこの若者とは同じ舎房にいた。そして二人は仲良しだった。親と子、そんな齢恰好であったが、よく二人のそうした姿が見かけられた。入浴へゆく列の中になどに。また「教誨」などでは二人はいつも並んで腰かけていた。