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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
線上閱讀小山 清《落穂拾い・犬の生活(おちぼひろい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 頁
焼け跡にもだいぶ新しい家が建ったようではあるが、住む人の顔が往時と変っているのを見るのは、懐かしさを削がれるようで、いやなものである。
私は昭和十二年の夏に、竜泉寺町の茶屋町通りにあるY新聞店の配達になった。そして二十年の三月十日に焼け出されるまでここにいた。もっとも終りの三年間は徴用されて、三河島の日本建鉄工業株式会社に通っていた。私はまる五年というものを、一つ土地で新聞配達をして過ごしたわけである。二十七歳から三十二歳の間のことである。こともなく過ごしてしまったようではあるが、顧みると、私の半生のアルト・ハイデルベルヒはこの間にあるように思われる。ある若い詩人の「町」という詩にこんなのがある。
小さな町であった
それでも町の匂いがした
煤煙が流れていた
おしろいの匂いがした
私は自分が新聞配達として五年間の朝夕を送った竜泉寺町とその界隈の思い出を、そこに住んでいた人たちのことを綴ろうと思う。おそらく私にふさわしい青春回顧の仕方であろう。知らない人は意外に思うであろうが、購読者と配達の間柄は存外親しみに溢れたものなのである。殊に下町では。それもごみごみした処では一層。