輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

とうじゅうろうのこい

藤十郎の恋・恩讐の彼方に

菊池 寛

線上閱讀菊池 寛《藤十郎の恋・恩讐の彼方に(とうじゅうろうのこい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 37,146 字 · 74 頁

青空文庫

藤十郎の不機嫌の背後に、そうした根本的な屈託が、潜んでいるとは気のつかない一座の人々は、白け始めようとする酒宴の座を、どうかして引き立たせようと、思ったのだろう、五十に手の届きそうな道化方の老優は、傍に坐っていた二十を出たばかりの、野良帽子を着た美しい若衆方を促し立てながら、おどけた連舞を舞い始めた。

藤十郎は、二人の舞を振向きもしないで、日頃には似ず、大杯を重ねて四度ばかり、したたかに飲み乾すと、俄に発して来た酔に、座には得堪えられぬように、つと席を立ちながら、河原に臨んだ広い縁に出た。

河原の闇の底を流れる川水が、ほのかな光を放っている外は、晦日に近い夜の空は曇って、星一つさえ見えなかった。声ばかり飛び交うているかのように、闇のなかに千鳥が、ちちと鳴きしきっていた。

歌舞伎の長者として、王者のように誇を、持っていた藤十郎の心も、蹴合せに負けた鶏のように悄気きってしまっていた。彼が、座を立った為に、上からの圧迫の取れたように、急にはずみかけた酒宴の席のさわがしいどよめきを、後にしながら、彼は知らず知らず静寂な場所を求めて、勝手を知った宗清の部屋々々を通り抜けながら、奥の離座敷を志した。