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くものゆめ
蜘蛛の夢
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《蜘蛛の夢(くものゆめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 頁
八幡の本社はこの二月の火事に類焼して、雪の下の町もまだ焼け跡の整理が届かないのであるが、江の島開帳を当て込みに仮普請のままで商売を始めている店も多かった。
しかも仇を持っているような三人は、さすがに悠々とここに一泊する気にはなれなかった。今夜は金沢で泊ることにして、見物はまずいい加減に切上げて、鎌倉のお名残りに由比ヶ浜へ出て、貝をあさる女子供の群れをながめながら、稲村ヶ崎の茶屋に休んでいると、五十前後の男が牛を牽いて来た。
「牛に乗ってくだせえましよ。」
ここらの百姓が農事のひまに牛を牽いて来て、旅の人たちに乗れと勧めるのは多年の慣いである。牛に乗ると長生きをするなどというので、おもしろ半分に乗る人がある。鎌倉へ来た以上、話のたねに牛に乗って行こうという人もある。それらの客を目当てに牛を牽いた百姓らがそこらに徘徊しているのも、鎌倉名物の一つであった。
「その牛はおとなしいかえ。」と、お杉は訊いた。
「みんな牝牛だからねえ。おとなしいこと請合いですよ。馬や駕籠に乗るよりも、どんなに楽だか知れやあしねえ。」と、百姓は言った。
「ほかの牛も直ぐに呼んで来ますから、三人乗っておくんなせえ。