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おつきさまのうた

豊島与志雄童話集

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《豊島与志雄童話集(おつきさまのうた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,569 字 · 336 頁

青空文庫

その時、丸彦はとつぜん、右手の大きな法螺の貝を、馬の耳もとにくつつけて、息いっぱいに、ぶうぶうと吹きならしました。

馬はおどろいてとびあがり、男はおこって、山刀をぬいてとびかかってきました。

丸彦は一足よけて、鉄づくりの鞭を左手にふりかざし、男のほうをあしらいながら、右手の法螺の貝をなお吹きならしました。馬はますますおどろき、たけりくるって、綱をひききったはずみに、いっさんにかけ出しました。それを見ると、男はびっくりして、丸彦の方をすてて、馬のあとを追って走りだしました。

丸彦は、はははと笑いました。けれどやがて、笑いやめて、法螺の貝で額をこつんと叩きました。

「しまった。あの男は怪しい奴だ。あれをつかまえるのだった」

しかしもう、馬も男も、どこかへいってしまって、姿は見えませんでした。

丸彦は、そそっかしいことをしたとくやみながら、家の方へかえっていきました。

野原をよこぎり、小さな丘をこえて、川づたいに帰っていきますと、その川の岸の柳のこかげに、なにか大きなものがつっ立っていました。もう、うす暗くなっていましたが、よく見ると、それが、さっきの馬だったのです。