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あかひげしんりょうたん
赤ひげ診療譚
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《赤ひげ診療譚(あかひげしんりょうたん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 18,113 字 · 35 頁
三
そこで去定は、そういう事情なら養生所へ引取ると云いだした。女主人はどうぞと答えた。厄介者がいなくなるのは有難いくらいです、どうか伴れていって下さい。女主人がそう云っていると、おとよが急に泣きだしながら、あたしはいやです、と云って肩を左右に振った。
「あたいここのうちがいい」とおとよは子供がだだをこねるように叫んだ、「あたいどこへもいかない、ここのうちにいるんだ、伴れてっちゃいやだ」
それは本心のようであった。女主人を恐れるためではなく、本当にこの家にいたいという感じが、その声にも、涙のこぼれ落ちる眼つきにも、よくあらわれていた。
「よく聞け」と去定はなだめるように云った、「おまえは悪い病気にかかっている、このままこんなところにいたら、その病気のために片輪か気違いになってしまうぞ」
「いやだ、いやだ」とおとよは泣きながら叫んだ、「あたいこのうちにいる、あたいを伴れてっちゃいやだ、いやだ」
三
女主人は平然と、きせるで莨をふかしていた。隣りの部屋には女が二人いたが、これも息をころしているようすで、こそっとも物音がしなかった。だが、おとよの泣き叫ぶのを聞きつけたらしく、戸口の外で「なんだなんだ」