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あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《赤ひげ診療譚(あかひげしんりょうたん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 18,113 字 · 35 頁

青空文庫

と去定は云った、「板敷がもし合理的でなかったとしたら、すでに敷き畳があったのだから、もっと早く畳というものが一般化されていたに相違ない」

道は坂にかかっていた。七月中旬の午後三時、暦の上では秋にはいったのだが、暑さは真夏よりもきびしかった。その日は微風もなく、空は悪意を示すかのように晴れていて、うしろから照りつける日光は、まるで手に触れることのできる固体のように、立体的な重さが感じられるようであった。登はもちろん、薬籠を背負った竹造も、着物の背中や二の腕あたりは汗ですっかり濡れているし、額から顔、衿首などにながれ出る汗を拭くのにいそがしかったが、去定はまったく汗をかいていない。――登はこのことを夏にかかるころから気づいていた。脂肪質ではないが、去定は固太りに肥えている。両腕や広い肩には筋肉が瘤をなしており、手も大きいし指も百姓のように太い、腰だけは若者のように細くひき緊っているが、ざっと見た眼には年老いた牡牛のような感じを与える。――したがって、暑さも人一倍だろうと思うのだが、どんな日盛りの道でも平気で歩くし、決して汗というものをかかない。暑いなどと云わないことには驚かないが、汗を一滴もかかないということは、登にはわけがわからなかった。