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あかひげしんりょうたん
赤ひげ診療譚
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《赤ひげ診療譚(あかひげしんりょうたん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,626 字 · 45 頁
「長次を呼び返しているんです」と卯兵衛が囁いた、「井戸は地面の底へ続いてますからね、死にかかっている者をああやって呼べば、こっちへ帰って来るっていうんですよ」
空には星一つ見えず、暗い路地に風が吹いている。風は強くはないが、たしかに冬の来たことを示すように、しみるほど冷たかった。登は井戸の中に響く女たちの嘆き訴えるような呼び声を、やや暫く黙って聞いていた。――使いの伝言で、来るかと思った去定は来ず、登は十一時ごろまで五郎吉の家にいたが、ひと眠りするようにと云われ、差配の家へ戻って寝床にはいった。枕が変ると寝にくいたちで、どうせ眠れはしないだろうと思ったが、まさをの姿を想い描き、どういう機会に縁談を承知しようか、などと考えていると、幸福感で躯ぜんたいが温かく包まれるように思われ、いつかしらうとうとと眠りこんでしまった。
午前三時に、登は呼び起こされた。
「面倒でしょうがちょっと起きて下さい」と卯兵衛が云った、「長次のやつが先生に会いたいと云ってきかないそうです」
登は起き直った、「容態でも変ったのか」
「わかりません、そいつは聞きませんが、ただぜひとも先生に会わせてくれと云って、承知しないんだそうです」