輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
しゅみのいでん
趣味の遺伝
線上閱讀夏目 漱石《趣味の遺伝(しゅみのいでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 38,235 字 · 77 頁
将軍の去ったあとは群衆も自から乱れて今までのように静粛ではない。列を作った同勢の一角が崩れると、堅い黒山が一度に動き出して濃い所がだんだん薄くなる。気早な連中はもう引き揚げると見える。ところへ将軍と共に汽車を下りた兵士が三々五々隊を組んで場内から出てくる。服地の色は褪めて、ゲートルの代りには黄な羅紗を畳んでぐるぐると脛へ巻きつけている。いずれもあらん限りの髯を生やして、出来るだけ色を黒くしている。これらも戦争の片破れである。大和魂を鋳固めた製作品である。実業家も入らぬ、新聞屋も入らぬ、芸妓も入らぬ、余のごとき書物と睨めくらをしているものは無論入らぬ。ただこの髯茫々として、むさくるしき事乞食を去る遠からざる紀念物のみはなくて叶わぬ。彼らは日本の精神を代表するのみならず、広く人類一般の精神を代表している。人類の精神は算盤で弾けず、三味線に乗らず、三頁にも書けず、百科全書中にも見当らぬ。ただこの兵士らの色の黒い、みすぼらしいところに髣髴として揺曳している。出山の釈迦はコスメチックを塗ってはおらん。金の指輪も穿めておらん。芥溜から拾い上げた雑巾をつぎ合せたようなもの一枚を羽織っているばかりじゃ。