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きんせいかいじんでん

近世快人伝

夢野 久作

線上閱讀夢野 久作《近世快人伝(きんせいかいじんでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 79,469 字 · 157 頁

青空文庫

その他の智識としては馬琴、為永の小説や経国美談、浮城物語を愛読し、ルッソーの民約篇とかを多少噛っただけである。中村正直訳の西国立志篇を読んだか読まぬかはまだ聞いた事がないが、いずれにしても杉山茂丸事、其日庵主の智情意を培った精彩が、右に述べたような漢学一と通りと、馬琴、為永、経国美談、浮城物語、西国立志篇程度のもので、これに、後年になって学んだ義太夫の造詣と、聞き噛り式に学んだ禅語の情解的智識を加えたら、彼の精神生活の由来するところを掴むのは、さまで骨の折れる仕事ではあるまい。勿論彼の先天的に持って生まれた智力と、勇気は別問題にしての話である。

明治と共に生れ、明治と共に老いて来た彼は明治維新の封建制度破壊以後、滔々として転変推移する、百色眼鏡式の時勢を見てじっとしておれなくなった。このままに放任しておいたら日本は将来、どうなるか知れぬ。支那から朝鮮、日本という順に西洋に取られてしまうかも知れぬと思ったという。その時代の西洋各国の強さ、殊に英国や露西亜の強さと来たら、とても現代の青年の想像の及ぶところでなかったのだから……。

杉山茂丸は茲に於て決然として起った。