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きんせいかいじんでん
近世快人伝
夢野 久作
線上閱讀夢野 久作《近世快人伝(きんせいかいじんでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 79,469 字 · 157 頁
劣敗者の死屍は土足にかけられ、唾せられても致方がないように考えられているようであるが、しかし斯様な人情の反覆の流行している現代は恥ずべき現代ではあるまいか。
これは筆者が故奈良原翁と特別に懇意であったから云うのではない。又は筆者の偏屈から云うのでもない。
志士としては成功、不成功なぞは徹頭徹尾問題にしていなかった翁の、徹底的に清廉、明快であった生涯に対して、今すこし幅広い寛容と、今すこし人間味の深い同情心とを以て、敬意を払い得る人の在りや無しやを問いたいために云うのである。
その真黒く、物凄く輝く眼光は常に鉄壁をも貫く正義観念を凝視していた。その怒った鼻。一文字にギューと締った唇。殺気を横たえた太い眉。その間に凝結、磅している凄愴の気魄はさながらに鉄と火と血の中を突破して来た志士の生涯の断面そのものであった。青黒い地獄色の皮膚、前額に乱れかかった縮れ毛。鎧の仮面に似た黄褐色の怒髭、乱髯。それ等に直面して、その黒い瞳に凝視されたならば、如何なる天魔鬼神でも一縮みに縮み上ったであろう。況んやその老いて益々筋骨隆々たる、精悍そのもののような巨躯に、一刀を提げて出迎えられたならば、如何なる無法者と雖も、手足が突張って動けなくなったであろう。