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きんせいかいじんでん
近世快人伝
夢野 久作
線上閱讀夢野 久作《近世快人伝(きんせいかいじんでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 79,469 字 · 157 頁
頭山翁が玄洋社を提げて、筑豊の炭田の争奪戦をやらせている頃、福岡随一の大料理屋常盤館で、偶然にも玄洋社壮士連の大宴会と、反対派の壮士連の大宴会が、大広間の襖一枚を隔ててぶつかり合った。
何がさて明治もまだ中途半端頃の血腥い時代の事とて、何か一と騒動初まらねばよいがと、仲居、芸妓連中が心も空にサービスをやっているうちに果せる哉始まった。
合の隔ての襖が一斉に、どちらからともなく蹴開かれて、敷居越しに白刃が入り乱れ、遂には二つの大広間をブッ通した大殺陣が展開されて行った。
大広間に置き並べられた百匁蝋燭の燭台が、次から次にブッ倒れて行った。
そうして最後に、床の間の正面に端座している頭山満の左右に並んだ二つの燭台だけが消え残っていた。これは広間一面に血の雨を降らせ合っている殺陣連中が、敵も味方も目が眩んでいながらに、そうした頭山満の端然たる威風に近づくとハッと気が付いて遠ざかったからであった。
その頭山満の左右と背後の安全地帯に逃げ損ねた芸者仲居が、小さくなって固まり合って、生きた空もなくなっていた。しかし頭山翁は格別変った気色もなく、活動のスクリーンでも見てるような態度で、眼前の殺陣を眺めまわしていたが、そのうちにフト自分の傍に一人の舞妓がヒレ伏しているのに気が付くと、片手でその背中を撫でながら耳に口を寄せ