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じんるいのせいぞんきょうそう

進化と人生(上)

丘 浅次郎

線上閱讀丘 浅次郎《進化と人生(上)(じんるいのせいぞんきょうそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 82,343 字 · 164 頁

青空文庫

しかしながら、いかに団体が大きくなっても、各個体が欲情の一部を制して団体の要求に応じなければ、団体の生存が保てぬことは依然として変わらぬから、各個体には無意識的に多少全団体の利益となる行為をなすの習性が本能として残り、なにゆえという理由を知らずに、ただ善を善として行なっているごとき外観を呈するにいたる。熱帯地方を旅行して猿の習性を調べた学者の報告などを読んでみるに、戦うて傷を受けた猿があると、他の猿等はこれを助け保護し、食物を与えたり、水を飲ましたりして、非常にこれを介抱し慰める。また子を遺して親が死ねば他の猿が直ちにその子を養い取り、実子同様にこれを慈しみ育てることなどが、ていねいに記載してあるが、単にこの所行だけを考えると、あたかも猿には猿道(Simianitas)とでもいうものがあり、博愛(Philopithecia)の精神に基づいてしているごとくに見える。

少数の個体より成れる団体のありさまに比較して猿のかかる行為の原因を考えてみるに、団体の要求に応ずるのは敵に対してわが団体を維持し、したごうてわが身を全うするためであるという観念は個体の数のふえるにしたごうて漸次個体の意識の範囲より脱し去り、個体はただ漠然とこれを義務のごとくに感じて実行しているのであろう。