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じんるいのせいぞんきょうそう

進化と人生(上)

丘 浅次郎

線上閱讀丘 浅次郎《進化と人生(上)(じんるいのせいぞんきょうそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 82,343 字 · 164 頁

青空文庫

と、他に比類なき知力とを有する程度までに到着した次第であって、その間にわれわれの先祖はおのおのその時代にしたがい、あるいは魚類、あるいは蛙類、ないしは犬類または猿類を相手として、はげしき生存競争をなし、ついに知力によって、これらの敵に打ち勝ち、もはや天下に恐るべき敵なき全盛の域に達して、今日ではもっぱら知力を用いて相互に呑噬を逞うするよりほかなき境遇にいたったのである。換言すればわれわれの今日有する大脳は長い歴史の結果であって、いつもその時代の生存競争に必要な程度までに発達し、つねに先へ先へと進んできたのである。

なお考えねばならぬのは、大脳の働きが外界からの影響をこうむっていちじるしく変わることである。たとえば酒精を含んだ飲料を用いると知、情、意ともにたちまち調子が変わって、つねに静かな人も盛んに騒ぎ出し、無口の人も急にしゃべるようになり、あるいは泣きあるいは怒って一時はあたかも狂気のごとくに見える。されば酒は昔から「気違い水」とも名づけきたったが、脳の働きの調子を狂わせるものは酒のほかにもなおたくさんにある。気違い茄子と名づける果実のごときもこれを食えば、一時全く狂気のごとくになって、全家こぞって神輿をかついで村中を駆けまわったなどという例もある。