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じんるいのせいぞんきょうそう

進化と人生(上)

丘 浅次郎

線上閱讀丘 浅次郎《進化と人生(上)(じんるいのせいぞんきょうそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 82,343 字 · 164 頁

青空文庫

また現在すでにおくれているならばまずかれに追い付かねばならぬが、追いつくには相手が一歩進む間にこちらは二歩進み、相手が三歩進む間にこちらが四歩進むというように、自分の速力のほうが目立つほどにまさっていなければならぬ。しかるに今日のありさまを見ると、わが国の文明が他の一等国におくれているのみならず、文明に進む速力もかれにおよばぬように見える。最近十数年来のことを考えてみても、ヨーロッパ、アメリカの一等国にはいちじるしい発明がたくさんある。普通に人の知っているものだけをあげても、レンチヘンのエッキス光線とか、ラジウムとか、自動車、飛行機とか、または人造の藍、人造の樟脳、石英のガラスとか、なおその他に数多くある。その同じ十数年の間にわが国ではこれに匹敵すべき発明が一つでもあったかというに、おそらく何もなかったように思う。化学知識応用の盛んなことはドイツが一等すぐれているが、従来特殊の天産物からのみ製した物を人工で勝手に造りうるようになったのが種々ある。今述べた人造の藍、人造の樟脳などはその例であるが、藍の草を培養せずして真の藍を造り、樟樹のないところで真の樟脳を造りうるようになったのであるから、従来藍草や樟樹を特産物としていた国には急に強敵が現われたわけで、経済上いちじるしい打撃をこうむることになる。