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じんるいのせいぞんきょうそう

進化と人生(上)

丘 浅次郎

線上閱讀丘 浅次郎《進化と人生(上)(じんるいのせいぞんきょうそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 82,343 字 · 164 頁

青空文庫

人間の身体には、単に人間ばかりを研究していたのでは、とうてい意味のわからぬ部分や性質があるが、これを明らかにするにはぜひとも比較研究によらねばならぬ。たとえば成人の頭骨の側面には耳殻を動かすべき筋肉がいくつもあるが、何故かかる不用の筋肉がここにあるかということはその筋肉のみを調べたのではとうていわからぬ。他の動物と比較し、他の獣類では実際この筋肉が働いて耳殻を響きのくる方角に向け得ることを知れば、これは昔人間がまだ人間とならなかったころの先祖が実際動かしていたもので、遺伝によって今日までも形だけを存しているものとして、初めてその意味が明らかになる。また人間の胎児が母の体内で発育する途中には、一時頸の両側に魚の鰓孔のごとき孔が幾対かできて、のちにふたたび閉じて消えるが、これなども、ただ人間の発生のみを調べていたのでは、いかにくわしく研究しても、とうていなにゆえかかる一時的の無用の孔が必ず生じて、しかるのちに消え去るかということは知られぬ。哺乳類から魚類まで種々の脊椎動物の発生を比較研究し、人間の胎児の頸の両側に一時生ずる孔は、魚類の頸部の側面に終生存する鰓孔と同一のものであることを確かめれば、これは人間の先祖がいまだ水中に住し、魚のごとき形を呈していたころに、実際鰓孔として役に立ったもので、その痕跡が今日