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しぜんかいのきょぎ

進化と人生(下)

丘 浅次郎

線上閱讀丘 浅次郎《進化と人生(下)(しぜんかいのきょぎ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 55,568 字 · 109 頁

青空文庫

しからば光のもっとも明るいところとはどこかというに、われらの考えによれば、これはいまだ哲学などに捕えられぬ子供の心である。哲学などを考えぬ前の子供たちがだれもあると信じていることは、まずあると見なしてかかり、あるともないともまるで問題にしていないことは、まず問題にせずに捨ておき、かような状態を出発点として、次第に知識を増補したり、誤りを正したりしてゆけば、おそらくはなはだしい誤謬におちいらずに進んでゆくことができよう。子供らには自分の目の前の見えている人が、はたして真にいるものか、それとも、ただ自分がかく感ずるだけで、実際にはその人は存在しておらぬのではなかろうかなどとむだなことに頭を悩ます者は一人もない。目の前に見える人間はたしかにそこにいると信じて、これについて疑うてかかるような隙人があろうとは夢にも思わずにいる。青い木でも、赤い花でも、堅い石でも、柔かい豆腐でも、みな、見えたとおりのその物が確かにそこに存在していると固く信じて少しも疑わぬ。提燈の光のもっとも明るいところはすなわちここである。何を信じ何を疑うかは人々の勝手であるが、われらから見れば、子供らのこの状態のほうが幾段も推理を重ねた哲学者の結論よりもはるかに誤りをふくむことが少ないように感ずる。