輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

じゅうきちひょうりゅうきぶん

重吉漂流紀聞

久生 十蘭

線上閱讀久生 十蘭《重吉漂流紀聞(じゅうきちひょうりゅうきぶん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 26,456 字 · 52 頁

青空文庫

昼七ツ刻、丸太舟を降し、鍋釜、鉄砲、当座の粮米、豚肉などを積み、重吉、音七、薩摩の衆、合せて五人が乗移った。ベケットは舷に出て手を振って見送っていたが、ロシア船は帆をあげて岸から遠ざかり、潮路の果てに帆影を没し去った。

五人が力を合せて漕ぎ進んで行くうちに、地方も間近いところで逆風が吹きおこった。櫓も櫂もきかばこそ、二十里ばかり吹き流され、夜の八ツ時、辛うじてウルップという小島の北側の砂浜に漕ぎつけた。ここに二日いて、七月の七日、日本領エトロフ島へ渡った。

舟を着けたところは、岩山のなぞえにつづく砂地の浜で、小一里ほどむこうに、那智山の滝ほどもあろうかと思われる滝が落ちている。熊の足跡ばかりが見える無人の渚だけれども、ここが日本の領土だと思うと、なつかしさ嬉しさの情が胸元にこみあげ、誰も彼も砂浜に坐りこんだまましばらくは涙にくれていた。

音七は重吉の手をとって、

「さてお船頭、おれは気が狂って首縊りの輪索をつくり、人にもすすめ、自分もその気になって、いくどか縊れ死のうとした。おぬしがとめてくれなんだら、あのとき死んでいたはずだから、この喜びにあうことはなかったろう。