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おちぼ
野菊の墓
伊藤 左千夫
線上閱讀伊藤 左千夫《野菊の墓(おちぼ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。
N3 · 進階 · 新字新假名 · 25,621 字 · 52 頁
三
そうだそうだ、大木さんがいった、医学は君の職業だ、文学は君の生命だと。職業を学ぶに得意がる理屈はない、どうしても僕はまだ幼稚だな、ついに病気のために卒業が出来ないとすると、いよいよ文学よりほかに僕の生命はない、どうしても文学はやらねばならぬ。文学といっても僕には歌だ、子規先生も大学を中途にやめて文学をやった。おれもいよいよ肺病ときまれば詩人生活だ、それよりほかにみちはない。詩人生活にはいることができれば、肺病になったってかまわない。三十で死ぬも六十で死ぬも、死んだあとからみれば同じだ。
子供の泣き声が耳にはいって目がさめると、障子をはたくはたきの音がする。世間はまだ静かだ。矢野はまた眠った。
三
下宿生活の準備と登校準備で三四日経過した。出るときはあれもこれもと思って出ても、放浪的に歩いて何一つ買わないで帰る日もある。スパルテホルツの解剖図とラウベルの解剖学とを買う考えで、本屋の前まで来ると、学生が五六人もいてあまりにぎやかだから、そこにはいるのがいやでしばらくあたりをうろついてる間に、了見が変わり上野に行って、博物館を見たり、動物園を見たり、理屈もなく遊んでしまった日もある。