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きんごじゅうりょう

金五十両

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《金五十両(きんごじゅうりょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,843 字 · 23 頁

青空文庫

四

四

「……つまり」

宗吉はもういちど冷笑した。

「この家の仕掛が仕掛だから、番所なんぞとうるさい係わりがもちたくないわけか」

「そうかも知れません、でも一つだけすなおに聞いて置いて下さいな、お天気だって晴れているとき許りはない、十日も二十日も降ったり、暴風雨や洪水になることもあるんですよ」

宗吉はかさかさな声で笑いながら、両手を頭の後ろへ廻して仰向に倒れた。

翌朝はやく宗吉は柏屋を立った。

雨合羽と笠と新しい草鞋が揃えてあった、お滝という女の心配して呉れたものらしい、然し当人は姿をみせなかった。

……けむるような雨の降る、まだ仄暗い宿場町を歩きだしてから、彼はなんども足を停めて戻ろうとした、ひとめ会って来ればよかった、懐かしいような、温たかく惹かれる想いが心に残って、それがしだいに大きくふくれあがるようだった。

「へん、どこまでも飴ん棒に出来てやあがる」

思わずこう呟いて頭を振り、笠の前を下ろしながら、唆しかけるような足どりで彼は急ぎだした。

舞坂へ二里半の道を馬郡という小さな宿まで来たとき、宿のかかりで一人の武士に呼止められた。雨支度をしているので状かたちはわからないが、まだ若そうな逞しい躯つきで、ひじょうに急いでいるようすが眼についた。