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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
線上閱讀林 不忘《釘抜藤吉捕物覚書(くぎぬきとうきちとりものおぼえがき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 19,251 字 · 39 頁
紋之助は、痩せた肩を聳かして、真正面から、藤吉を見据えた。
「おそれいりますが、おめがね違いです。」
「とは言わせねえぜ。じつああっしが――と、直に出な、直に。」
口を開いたのは、おこよだった。
「親分さん、何をつまらない冗談をおっしゃるんです。」血が滲みそうに、切れ長の眼尻が、上っていた。
「師匠は、鼠一匹殺さないお人で、それに、こんなお年寄りじゃあありませんか。釘抜藤吉とも言われる方が、すこしは眼をあけて人を見ていただきましょう。」
「親分、師匠はこの部屋で、おこよさんと何か手真似で話をしていて、」出方の藤吉も、気の毒そうに、「廊下にゃいなかったんですぜ。」
「おうさ。その手真似のことよ。」と、藤吉は、おこよへ笑って、「その時師匠は、鴨居越しに、障子のそとへ人形を垂らして見ずに糸を使っちゃあいなかったかな。」
「ええ。そうやって、糸の使いをいろいろ苦心しながら、わたしに指の動かし方を話して聞かせていらっしゃいましたが――。」
一同の眼が、障子の上を振り仰ぐと、なるほど、鴨居のすかしがあけられて、開きが作られてある。
藤吉は、笑い出していた。
「早く言やあ、右にも左にも、下にも、犯人の逃らかるところがねえとすりゃあ。