輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

くぎぬきとうきちとりものおぼえがき

釘抜藤吉捕物覚書

林 不忘

線上閱讀林 不忘《釘抜藤吉捕物覚書(くぎぬきとうきちとりものおぼえがき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,760 字 · 24 頁

青空文庫

一

「勘の野郎を起すほどのことでもあるめえ。」

合点長屋の土間へ降り立った釘抜藤吉は、まだ明けやらぬ薄暗がりのなかで、足の指先に駒下駄の緒を探りながら、独語のようにこう言った。後から続いた岡っ引の葬式彦兵衛もいつものとおり不得要領ににやりと笑いを洩らしただけでそれでも完全に同意の心を表していた。しじゅう念仏のようなことをぶつぶつ口の中で呟いているほか、たいていの要は例のにやりで済ましておくのが、この男の常だった。そのかわり物を言う時には、必要以上に大きな声を出してあたりの人をびっくりさせた。非常に嗅覚の鋭敏な人間で、紙屑籠を肩に担いでは、その紙屑の一つのように江戸の町々を風に吹かれて歩きながら、ねたを挙げたり犯人を尾けたり、それに毎日のように落し物を拾って来るばかりか、時には手懸り上大きな獲物のあることもあった。じつは彼の十八番の尾行術も、大部分は異常に発達したその鼻の力によるところが多かった。早い話がすべての人が彼に取っては種々な品物の臭気に過ぎなかった、親分の藤吉は柚子味噌、兄分の勘弁勘次は佐倉炭、角の海老床の親方が日向の油紙、近江屋の隠居が檜――まあざっとこんな工合いに決められていたのだった。