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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
線上閱讀林 不忘《釘抜藤吉捕物覚書(くぎぬきとうきちとりものおぼえがき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,760 字 · 24 頁
」
「でかした。」
と一言いいながら、藤吉は縁へ駈け上った。
「彦、仙公の野郎が風を食いやがった。路地を出て左へ切れたから稲荷橋を渡るに違えねえ。まだ遠くへも走るめえが、手前一つ引っくくってくるか。」
「ほい来た。」
と彦兵衛は鼻の頭を擦り上げて、
「どこまでずらかりやがっても、おいらあ奴の香をきいてるんだから世話あねえのさ。親分、あの仙公て小僧は藁臭えぜ――。」
「はっはっは、また道楽を始めやがった。さっさとしねえと大穴開けるぞ。」
「じゃ、お跡を嗅ぎ嗅ぎお迎えに――。」
ぐいと裾を端折って、彦兵衛は表を指して走り出した。
「彦。」
藤吉の鋭い声が彼を追った。
「いいか、小当りに当って下手にごてりやがったら、かまうことあねえ、ちっとばかり痛めてやれ。」
「この模様じゃ泥合戦は承知の上さ。」
呟きながら彦兵衛は振り返った。
「して、これから、親分は?」
「知れたことよ、郡代前へ出向いて行って上布屋をうんと引っ叩いてこよう――。」
四
羽毛のような雪を浮かべて量を増した三俣の瀬へ、田安殿の邸の前からざんぶとばかり、水煙りも白く身を投げた荷方の仙太郎は、岸に立って喚いた彦兵衛の御用の声に、上の橋から船番所の艀舟が出て、二丁ほど川下で水も呑まずに棹にかかった。