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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(九) 全十冊

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(九) 全十冊(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 41,029 字 · 82 頁

青空文庫

銭形平次の指は、ピタリと若旦那の重三郎を指して居るではありませんか。

「親分?」

八五郎の勘の悪さ。

「その男が下手人だよ、威勢よく、御用ッとやるがいい」

平次の言葉のおわるを待たず、重三郎はサッと身を翻しました。が、早くもその気勢を察して、退路を絶った八五郎。

「野郎ッ」

無手と組んで行くのを、恐ろしい剛力で、ハネ飛ばして、一気に外へ。

「待て」

がつづく平次は、その前に立塞がっていたのです。

「畜生ッ」

重三郎は兇暴極わまる曲者でした。長いあいだ軽業小屋で鍛えた強靭な身体と、恐ろしい気転とで、ともすれば平次と八五郎の手を免れて逃出そうとしましたが、久し振りに銭形平次の掌から投げられた五六枚の銭に、その戦闘力をすっかり封じられて、

「野郎、骨を折らせやがる」

八五郎の手でどうやら縛りあげてしまいました。

繩付を下っ引に預けて、平次と八五郎が四谷忍町に飛んで行くと、正に小松屋の内情は重三郎が言ったとおりでした。

迎えてくれた叔父の安兵衛は五十前後の着実な男、甥の吉太郎というのは、如何にも一と癖ありそうで、正直者らしいうちにも、容易に重三郎の手には乗るまじき気魄が見えました。