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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九) 全十冊
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(九) 全十冊(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 41,029 字 · 82 頁
「落着いていちゃいけませんよ、親分。お膝元に大変なことがあったんだ、しかも相手はピカピカするような綺麗首だ。勿体ないのなんのって――」
「あわてるな八、いったい誰がどうしたんだ」
平次は八五郎の逆上あがったのへ水をブッかけるように、落着き払って動こうともしません。
「驚いちゃあいけませんよ、親分」
「驚かないよ、八五郎が大名になったって驚くものか」
「お半が自害したんですよ。あの吉田屋の離屋で、オンアボキアを唱っていた、切髪のお半が可哀想に匕首で胸を刺して、裸体になって死んでいますよ」
八五郎の報告の言葉から、平次はフト嫌なものを想像しました。それは離屋を急に改造した庵室の仏壇の前で、行い済した姿の若い美女が、あられもない姿になって、紅に染んで死んでいる、恐しく冒涜的な情景です。
「行こう、八」
平次は勃然として起き上りました。この間からの行がかりで、なんか変った事が起らなければいいがと思っている矢先、お半の自害は聴きのがしにならなかったのです。
三河町の吉田屋はこの間の内儀の死んだ時と違って、静まり返っておりましたが、店から入るとそれを待ち構えたように、主人の彦七が飛んで出ました。