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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十三)青い帯

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十三)青い帯(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 114,244 字 · 231 頁

青空文庫

中へ入ってみると、なんとなく顛倒して、大店らしい日頃の節度もなく、奉公人たちはただうろうろと平次の一行を迎えるだけです。

その中で一番落着き払っていたのは、若い手代の吉五郎でした。平次とガラッ八が入ると、後ろへ廻って心静かにその履物などを直しております。

奥へ入ってみると、後添いのお国は、継しい二番目娘お雪の部屋で、床の中に入ったまま、見事に喉笛を貫かれて死んでおりました。傷の様子では相当鋭利な脇差らしく見えますが、血の海の中にも、それらしい兇器は見当りません。

「ここはお内儀さんの部屋ですか」

平次は何よりそれが不思議だったのです。三月前にお吉が殺された部屋の手前、ここは妹娘のお雪の部屋とその時聞かされたはずです。

「いえ、ここはお雪の部屋ですが、ゆうべ私が本石町の店へ泊って留守だったので、家内が娘の身の上を心配して、部屋を換えて寝たんだそうです」

「すると――?」

「曲者は娘を殺すつもりで来たのかも知れませんね」

主人の半兵衛もそんなことまで気が廻るのでした。

「おや?」

平次は小机の上の硯に、摺りかけの水の残っているのと机の上に置いた筆の穂が、心持湿っていることに気がつきました。