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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 139,230 字 · 280 頁

青空文庫

「有難う、たいそう役に立ったよ。ところで、この長屋中にお六を怨む者もあったろうな」

「よく思う者はありません。烏金を貸してひどい取立てをした上、口やかましくて、けちで、大変な人でしたよ」

佐の市もだいぶ悩ませられたらしく、歯に衣を被せません。

「ずいぶん評判が悪いな」

「本郷中の憎まれ者でしたよ。死んだ者の悪口を言うわけではございませんが」

盲人らしい一国さで、佐の市はなおも言い募りそうにするのを、

「お前まア、そんな遠慮のない事を言っていいのかえ」

母親のおよのは路地から声を掛けながら入って来ました。

「構いませんよ。誰も盲目の私が殺したとは思いませんよ」

佐の市はどんなにお六にひどい目に逢わされていたか、こうでも言わなければ、腹の虫が納まらない様子でした。

「よほどお六とは仲が悪かったと見えるな」

平次も苦笑いをする外はありません。

「親分さん方、いつでも倅はこうですよ。お聴き流しを願います。――なアに、仲が良いも悪いもありゃしません。あのお六さんという人は、ときどき高い利息のつく金でも借りて儲けさしてやらないと、機嫌の悪い人だったんです」

およのは弁解らしく言うのでした。