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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 139,230 字 · 280 頁

青空文庫

金五郎なら、翌る日わざわざ空財布を自分の家の裏口へ捨てておくはずはない。――それに、金五郎が本当にお六を殺したなら、表戸ぐらいは開けておくだろうよ。裏口だけ開けておくと、自分が下手人だという証拠を残しておくようなものだ」

「…………」

万七は黙ってしまいました。

「下手人は岩吉でもない。――岩吉は臆病すぎるし、お六を殺した覚えがあるなら、手文庫から自分の入れた証文だけを抜いて行くはずはない」

平次はつづけました。

「与八は?」

と喜三郎。

「これも正直者だ。働くのが面白い男だ。人の金に目などを付ける男じゃない」

「佐の市は盲目だ。――あとは女ばかり」

こんどは喜三郎が言うのです。

「その通りだ」

と平次。

「すると下手人は誰だ?」

万七は少し威猛高になりました。

「外から入って来たのさ。――長屋の衆じゃない、長屋の衆はみな貧乏だが働き者だ」

「そんな馬鹿な事が、――お六の家の表の戸は内から締っているんだぜ。――その上木戸も輪鍵が掛っていたはずだ」

万七は抗議しました。

「下手人は宵のうちから前の空屋に忍んでいて、時分を見計らってお六の家へ入ったんだろう。たぶん金五郎が酒を買いに出たとき、――岩吉が帰る少し前だ。