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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 139,230 字 · 280 頁

青空文庫

三十二三のお吉は働くのと溜める外には興味のありそうもない、恐ろしく頑丈な醜女です。

佐野喜へ奉公に来て六年目、平常は店の方にいて、主人が寮へ来るときだけ付いて来るそうで、何を訊いても一向筋が通りません。

「主人を怨んでいる者があるだろう。お前の知っているだけの名前を言ってみな」

「皆んな怨んでるだ。私は給料が少なくて仕事が多いし、番頭さんは朝から晩までガミガミ言われるし、音松爺さんは六十八になるが、国へ帰して貰えそうもないし、お鶴は姉の百代さんが焼け死んだし、勝太郎さんは嬉し野さんが死んだし――」

お吉は水仕事で太くなった指を折って、こう勘定するのです。全く際限がありません。

「近頃主人にひどく叱られた者はないのか」

「毎日目の玉の飛び出るほど叱られるから、慣れっこになって驚かないだよ」

「けさの騒ぎのときお鶴が離屋に迎えに来たのか」

「いえ、大きな声をしたから驚いて駆け付けただ」

「お前が行くとき、雪の上に足跡があったかい」

「あったようだよ」

それ以上はこの女の粗笨な記憶を引出す術もありません。

「店中はともかく、世間の人が皆んな主人を怨んでいるわけじゃあるまい」