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ながつかたかししのしょうせつ「つち」
長塚節氏の小説「土」
線上閱讀夏目 漱石《長塚節氏の小説「土」(ながつかたかししのしょうせつ「つち」)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 1,420 字 · 3 頁
一方に斯んな考えがあった。――
好い所を世間から認められた諸作家の特色を胸に蔵して、其標準で新しい作物に向うと、まだ其作物を読まないうちに、早く既に型に堕在している。従ってわが評論は誠実でも、わが態度は独立でも、又わが言説の内容は妥当でも、始めから此方に定まった尺度を持っていて、其尺度で測ってならないもの迄も律したがる弊が出る。其結果は働きのない死んだ批評に陥って仕舞う事がよくある。
夫よりか、今日迄文壇に認められなかった、若くは顧みられなかった、新しい特殊な趣味を、ある作物のうちに発見して、それを天下に紹介する方が評家に取って痛快な場合が多い。又其特殊な趣味が容易に多数に肯われない所を、決然身を挺して唱道する所が、評家会心の点らしい。文壇はこれがために、新領土を手に入れたと同じ訳になるからである。
一方に又斯んな事実があった。――
近頃文芸の雑誌がしきりに殖える。毎月活版に組まれる創作の数も余程の数に上って来た。評論の筆を執るものが、一々それを熟読する機会を失った。余の如き自家の職業上、文芸の諸雑誌に一応眼を通すべき義務を感じていてさえ、多忙のため果さざる月が多い。