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もん

門

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《門(もん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 139,830 字 · 278 頁

青空文庫

宗助はただ早く帰りたかった。

ようやく時間が来て家へ帰ったとき、御米は不安らしく宗助の顔を見て、

「どうもなくって」と聞いた。宗助はやむを得ず、どうもないが、ただ疲れたと答えて、すぐ炬燵の中へ入ったなり、晩食まで動かなかった。そのうち風は日と共に落ちた。昼の反動で四隣は急にひっそり静まった。

「好い案排ね、風が無くなって。昼間のように吹かれると、家に坐っていても何だか気味が悪くってしようがないわ」

御米の言葉には、魔物でもあるかのように、風を恐れる調子があった。宗助は落ちついて、

「今夜は少し暖たかいようだね。穏やかで好い御正月だ」と云った。飯を済まして煙草を一本吸う段になって、突然、

「御米、寄席へでも行って見ようか」と珍らしく細君を誘った。御米は無論否む理由を有たなかった。小六は義太夫などを聞くより、宅にいて餅でも焼いて食った方が勝手だというので、留守を頼んで二人出た。

少し時間が遅れたので、寄席はいっぱいであった。二人は座蒲団を敷く余地もない一番後の方に、立膝をするように割り込まして貰った。

「大変な人ね」

「やっぱり春だから入るんだろう」

二人は小声で話しながら、大きな部屋にぎっしり詰まった人の頭を見回した。