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もん

門

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《門(もん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 139,830 字 · 278 頁

青空文庫

約一時間もしたと思う頃宜道の足音がまた本堂の方から響いた。

「老師が相見になるそうでございますから、御都合が宜しければ参りましょう」と云って、丁寧に敷居の上に膝を突いた。

二人はまた寺を空にして連立って出た。山門の通りをほぼ一丁ほど奥へ来ると、左側に蓮池があった。寒い時分だから池の中はただ薄濁りに淀んでいるだけで、少しも清浄な趣はなかったが、向側に見える高い石の崖外れまで、縁に欄干のある座敷が突き出しているところが、文人画にでもありそうな風致を添えた。

「あすこが老師の住んでいられる所です」と宜道は比較的新らしいその建物を指した。

二人は蓮池の前を通り越して、五六級の石段を上って、その正面にある大きな伽藍の屋根を仰いだまま直左りへ切れた。玄関へ差しかかった時、宜道は

「ちょっと失礼します」と云って、自分だけ裏口の方へ回ったが、やがて奥から出て来て、

「さあどうぞ」と案内をして、老師のいる所へ伴れて行った。

老師というのは五十格好に見えた。赭黒い光沢のある顔をしていた。その皮膚も筋肉もことごとく緊って、どこにも怠のないところが、銅像のもたらす印象を、宗助の胸に彫りつけた。